書評:「ひらめきスイッチ大全」は広告制作の道具箱

    
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

この記事は約 4 分で読めます。


僕は普段、本といえばビジネス書や自己啓発書の類はほとんど読まずに小説ばかりです。
そんな僕が今回この「ひらめきスイッチ大全」を読んだのは、Kindle Unlimitedで書名が目に止まって気まぐれにダウンロードしてみただけだったのですが、思いのほか実用的な本でした。

アイディアの生み方が100通り

この本は、「対象を逆さまにする」「人間の三大欲求から考える」「誰か1人のために考える」など、1章にひとつのアイディアの生み方が3~4ページの短い解説とともに書かれています。

たとえば「誰か1人のために考える」から一部を抜き出してみましょう。

対象が広ければ広いほど、手にする人の数も増えるはず。
そう思い込んでしまうと、誰にとってもつかみどころのない、平凡なアイデアになってしまいかねません。

どこかで一度振り返ってみませんか?
「これは誰のためのものなのか」
誰かひとりのことだけを考えれば、自然と気持ちがこもります。

(中略)

たとえば、本田技研工業の「スーパーカブ」というバイク。
これは創業者の本田宗一郎さんが「妻のために」と、開発したものでした。
市場へ食料を買い出しに行く妻が楽になるようにと、自転車に補助エンジンをつけたのが第一号。
その後、操作をより簡単に、オイルが服につかないように、燃費を向上させるためにと、妻のことを思って改良を重ねていきました。
結果、このバイクは世界に広まり、累計6000万台を販売するに至りました。

(引用:「ひらめきスイッチ大全」サンクチュアリ出版より。中略は筆者)

このように、アイディアの生み方について具体的な事例をもとに解説してくれていて、さらに出典となった参考文献やウェブサイトが示されています。

これが100章もあるので、アイディアの突破口はかならずどこかに隠れているでしょう。

道具箱のような本

とはいえ、これは1ページ目から順に全てを読むといった読み方には向きません。

広告制作の現場では、常にたくさんのアイディアを求められます。
行き詰まったときや、新たな視点からのアイディアがもっと欲しいときに適当にページを開いてみてアイディアを生む手助けとするのがいいでしょう。

そういう意味で、道具箱のような本なのです。

ある課題を解決するために使える道具はひとつではありません。
たとえば、壁に刺さった釘を抜くのに使える道具は、釘抜きだけではありません。輪ゴムを使う方法、ペンチを使う方法、新聞紙を使う方法、ロープを使う方法…といくつもの道具を使った何通りもの「釘を抜く」方法があります

その中から、壁の素材や釘の大きさ、釘は錆びていないか、頭が少し出ているのか、いま手持ちの道具で可能な方法はどれか…と考え、最適な方法を選択します。

アイディアの生み方も同じです。
何通りもの考え方、視点があり、いま自分が取り組んでいる課題に最適な方法を探せばいいのです。
そのためには、アイディアの母数は大いに越したことはありません。その手助けをしてくれる本です。

新人からベテランまで使える

広告制作をはじめて数年の新人にとっては、この本に載っているアイディアの生み方は斬新に感じるかもしれません。
ここから学べることは多いはずです。

しかし、長く広告制作の現場にいるベテランにとって、この本に載っているアイディアの生み方ひとつひとつには目新しさは感じないでしょう。
一方で「この場合にはこの方法を使えばいい」「この場合にこの方法は使えない」と無意識のうちに方法を限定してしまっていることがあると思います。

そんな時、この本を開くと「これも使えるかもしれない」と、長くしまってあった道具を久しぶりに取り出して新しいアイディアを生み出す手助けになってくれるはずです。

書籍版は2,160円、kindle版は1,512円で、Kindle Unlimited会員なら無料で読むことができます。
個人的にはパラパラと眺めることのできる書籍版がおすすめですが、まずはKindle版で試し読みしてみるのもいいでしょう。

この記事で紹介した本

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。