”人気者”を目指さないSNS運用のポイント

    
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僕がメインで扱っている仕事のひとつに、SNSの運用コンサルティングがあります。

クライアントの悩みは様々ですが、突き詰めれば「理想通りの効果が出ない」ということに尽きるでしょう。
解決すべき課題はさまざまですが、基本的には「知られていない」か「好かれていない」かのどちらか、または両方です

「知られていない」のか「好かれていない」のか。

まずは、課題の中心がどちらにあるか分析するところから始めます。
SNSのフォロワーアンケート以外の方法なら何でもいいでしょう(フォロワーは基本的に「知っていて」「好きな人」の集団なので)。

僕がよく使う方法はインセンティブを全員に配布するタイプのアンケート調査です。

抽選インセンティブだと実際の印象よりも良く、愛想いっぱいの答えが返ってきてしまうことがありますし、インセンティブなしの場合は「ものすごく好き」か「ものすごく嫌い」の二極化した答えが返ってきてしまいます。

「知られていない」のならやるべきことはシンプル

その結果、課題の中心が「知られていない」である場合、やるべきことはシンプルです。

その情報を知ってほしい対象(=ターゲット)を設定し、その人たちに知られるための努力をします。
具体的にはSNSプラットフォームの提供している広告を使うのが王道でしょうが、ターゲットによく知られている人物や企業のアカウントを通じた認知拡大(インフルエンサーマーケティングというやつです)もときどき使います。

「好かれていない」と「嫌われている」は違う

一方、「好かれていない」場合には問題はちょっと複雑です。

好かれていない原因が具体的な事故や不祥事などの場合、それは正確には「嫌われている」のであって、危機広報の出番です。

僕がここで考えたいのは「好きでも嫌いでもない」という意味での「好かれていない」

つまり、ターゲットにとってどうでもいい、好きとか嫌いとか決める必要のない対象の場合です。

生徒会選挙に喩えて考えてみる

話を少し変えて、SNSマーケティングを「生徒会選挙」で喩えてみます。

生徒会長の立候補者が3人います。

Aくんは「足が速く、頭が良く、人望の厚い人気者」。当然ながら当選候補の筆頭です。

Bくんは「目立つ特徴はないけれど学校のことをよく考えていてコツコツと物事を成し遂げる責任感と実行力のある人物」。生徒会長になればいい生徒会運営をしてくれそうです。

Cくんは「ふつうにいい人で嫌われ者ではないが、特筆すべき能力はない人物」。生徒会長の器ではありませんが、本当にいい人ではあります。

Aくんのような人は、普通にポスターを作って普通に演説をすれば順当に当選できます
唯一、気をつけなくてはならないのは不祥事です。

僕に相談を持ちかけてくるのは、BくんかCくん。

先ほどの理屈に戻ると、Bくんの場合はその実力を「知られていない」だけなので戦い方によっては勝てる見込みがあります。
効果的なポスターで実力をきちんと周知して、Bくんの実力を具体的な例を挙げて魅力的に話すことのできる人物に応援演説をお願いすれば、勝てるかもしれません。

難しいのが、Cくんです。
こちらは「好かれていない」候補者です。

力を尽くして知らせるほどの実力もないので、校内でいちばん面白いDくんに応援演説を頼んで体育館を爆笑の渦に巻き込むことで話題票を集めるのが手っ取り早い方法だと思います。

しかし、それで本当に勝てるでしょうか。
たぶん、勝てないでしょう。もし話題票で奇跡的に勝利を収めたとしても、それはDくんに集まった票なので、Cくんの生徒会運営は生徒の期待を裏切ってしまいかねません。
それでは、勝ったとしても誰も幸せになりませんよね

僕がCくんから相談を受けたとしたら、まずはとことん話してみます。
すると「ただのいい人」と目されていたCくんに「知られていない」素晴らしい実力や能力が隠れているかもしれません。
または、生徒会長ではなく生徒会書記に適した才能があるかもしれません。

買える人気は長続きしない

話をSNSマーケティングに戻します。

Aくんのような企業、つまりターゲットに愛されているAppleのような企業の場合にはたんたんと知らせたいことを知らせることに撤しても大丈夫です
きちんと成果も出るので「思ったような成果が出ない」といった相談ではなく「もっと新しいことがしてみたい」「もっとフォロワーを楽しませたい」といったプラス方向に加速する相談が来たりします。
期待を裏切らず、予算が許す範囲でいろいろなことを試すことができます。

Bくんのような企業の場合は、広告が効果を発揮します。
または「中の人」がセンスを発揮して話題化することで認知が広がり、結果として実力に見合った成果を得られます。

Cくんのような企業は、何をやったらいいか分からず「とりあえず笑えるコンテンツを拡散しよう」とか「クーポンをばら撒こう」という方向に走りがちです
でもそれは、人気を金で買っていることに他ならず、虚しいばかりか継続的な成果には繋がりにくい悪手と言えるでしょう。

もちろん、様々な理由で一時的にでもリアクションが欲しいという場面はあるので全面的に否定はしません。
ただ、人気を買うには大金が必要ですし、その人気は長続きしないということです。

誰しもが人気ものになる必要のない世界

長々と書いてきましたが、結局のところ言いたかったのはこの一言です。

冒頭で書いたように、SNSコンサルティングの依頼主(クライアント)は基本的に「理想通りの効果が出ない」ことを課題に僕のところへ相談を持ちかけてくださいます。

しかし、その裏には「理想通りの人気が出ない」という本音が隠れていることが少なからずあるのが事実です。

いま、SNSにはたくさんの人気者がいて、成果を上げている企業もたくさんあります。
そんな人達をみて「ああなりたい」と言うのは無理な話です。

10の企業には10の勝ち方があります。かかる時間も、お金も違います。
まずは成果の出ない理由が「知られていない」のか「好かれていない」のか、またはその両方なのかを見極め、自社の戦略を考えてみることです。

ときには、Cくんの喩えのように「生徒会長は諦めて書記に立候補する」というような判断が必要になることもあります。

具体的にどうしたらいいかわかりませんか?
そんなときは、どうぞ塚岡までご相談ください(笑)。


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